補助犬法設立10周年 5.22 を「補助犬の日」に 清水 和行

 2002年5月22日は、私たち盲導犬・聴導犬・介助犬使用者の悲願であった「身体障害者補助犬法」が参議院本会議において全会一致で可決成立した日です。当時、全日本盲導犬使用者の会は、日本介助犬使用者の会、聴導犬使用者「タッチの会」と力を合わせて、補助犬法成立のために活動していました。そして、あれから10年経った2012年5月22日、日本介助犬使用者の会 会長である木村 佳友(きむら よしとも)さん、聴導犬使用者「タッチの会」代表である松本 江理(まつもと えり)さん、そして当時、全日本盲導犬使用者の会 会長であった私が、補助犬法成立10周年を記念して集まることがかなったのです。
 2012年5月22日は東京スカイツリーのオープニングの日でもありました。なんと私たち3名の補助犬使用者は、補助犬法10周年を記念して、このオープニングセレモニーのテープカットをさせていただいたのです。テープカットを待つ補助犬三ユーザーと王貞治さんなど しかも世界の王 貞治(おう さだはる)さんもいっしょです。王さんの横に座らせていただいた時には、さすがの私も緊張しました。王さんにヤードを指さして「この子もワンちゃんなんですよ」なんていうギャグも出ませんでした。何十台ものカメラのシャッター音はすごかったです。主役はもちろん東京スカイツリーですが、補助犬法の良いアピールの場になりました。 スカイツリーにて、補助犬ユーザー三人で撮影
 

 午後3時からは衆議院第1議員会館多目的ホールで「身体障害者補助犬法成立10周年記念シンポジウム」が行なわれました。主催は「身体障害者補助犬を推進する議員の会」です。
 実は、この議連こそ補助犬使用者を応援してくださる国会議員の先生方の会です。もともと1999年7月に「介助犬を推進する議員の会」として発足しましたが、私たち全日本盲導犬使用者の会の働きかけもあり、聴導犬も加えて「身体障害者補助犬を推進する議員の会」として補助犬法成立に努力していただきました。当時の会長は自民党の橋本 龍太郎(はしもと りゅうたろう)元総理でした。現在の会長は民主党の前厚生労働大臣の細川 律夫(ほそかわ りつお)衆議院議員、事務局長は社民党の阿部 知子(あべ ともこ)衆議院議員です。このように超党派の議員連盟です。補助犬法は議員立法により成立した法律なのです。
 私たちが2006年に10万筆の署名を持って国会請願した、補助犬のトラブルに関する相談窓口の設置などについても、この議連のおかげで法改正が実現したのです。このシンポジウムにも、国会会期中の忙しい中、15名の国会議員の先生と27名の国会議員秘書さんが参加してくださいました。
 シンポジウムは阿部 知子先生の司会で行なわれました。細川会長のご挨拶、厚生労働省のご挨拶、議連の活動報告などの後、第一部として「身体障害者補助犬法の10年の歩みとこれから…」と題して使用者の立場から私、木村さん、松本さんが発表しました。私は、補助犬法の成立によって盲導犬の同伴が「お願い」から「権利」に変わったこと、透析の際の盲導犬の同伴が課題であること、拒否事例を減らすためには補助犬法の周知が必要なことなどについてお話ししました。
 第ニ部では「医療機関での現状と今後の取り組み」と題して、神戸大学大学院 保健学研究科の三浦 靖史准教授から報告がありました。病院や診療所へのアンケートより、「補助犬使用者が患者として来院した場合、受け入れてみれば特に問題がなかった」という結果が印象的でした。また、私が足の骨折の際、病院で盲導犬と松葉杖で歩く訓練をさせてもらったことについても報告しました。
 議連がこのシンポジウムの参加者に配布したパンフレットに私が書いたコメントを以下に書き添えます。

 1957年に国産第1号の盲導犬が誕生しました。あれから45年の月日を経た2002年5月22日は、私たちの悲願であった補助犬法が、参議院本会議において全国民の代表である国会議員の先生方の満場の賛成で可決・成立した日になりました。私たち目の見えないものが犬の力を借りて安全で快適に歩き社会参加することを、国民の皆様から「応援するからね」と励まされているように感じた日でもありました。しかし、まだまだ折角の補助犬法の存在と趣旨が、国の隅々まで行きわたっていないのが現状です。私たちの様に犬の力を借りて自立し、幸せになろうとしているものがいることを、多くの皆様に伝えていければと思います。

 最後の仕事は午後6時45分からの野田総理大臣への表敬訪問です。野田総理大臣 表敬訪問の様子総理官邸に盲導犬・聴導犬・介助犬使用者が揃って入場したのは初めてのことだと思います。野田総理がたまたま私の横の席に座られたので、私が補助犬法の周知などをお願いする文書をお渡しすることとなりました。そして5月22日を「補助犬の日」としていただけないかとお願いしてみました。もちろんお約束いただけるわけもありませんでしたが、我ながら良いアイディアかと思っています。世の中には私たちの知らないような「○○の日」がたくさんありますから、言い続けていれば本当に「補助犬の日」が認知されるかもしれません。ちなみにこの日の朝のNHKラジオ第一放送の「今日は何の日」で「2002年5月22日に身体障害者補助犬法が成立しました。」と放送されました。
 こうして忙しくも充実した1日が終わりました。そして私たちのために多くの方が動いてくださっていることに感謝する1日でもありました。
 東京スカイツリー10周年が補助犬法成立20周年になります。補助犬法の啓発のためにも、この偶然を味方にして行きたいものです。そして、5月22日を「補助犬の日」にしたいものです。

 追記、2014年、身体障害者補助犬を推進する議員の会が5月22日を「ほじょ犬の日」決め、日本記念日協会が登録。5月22日が「ほじょ犬の日」となりました。  この記事へリンク リンクその2